どうも、Dスケです。
先日、落合陽一さんの個展に行きました話を更新したのですが、その際に見た動画の中で興味深い言葉があって、さらにそれが自分の中でリンクしたことがあり、つらつらと書いてみます。
キーワードは、「当時代性」。
アートの当時代性について
その動画がこちら。「Silver Floats」を制作するのにあたっての落合さんのコメント動画です。
あの作品が、実はアンディ・ウォーホールの既作品からの発展アートだったってことがまず面白い。
これを知った後だと、アンディの「Silver Clouds」からの、落合陽一の「Silver Floats」なのかぁとか、鏡面でのアート作品の由来にもなっているのかとか、見えてくるものがまた違いますね。
ゼロ→イチで作られた作品じゃなく、もともとあったイチを今の時代に照らし合わせて再構成したってのも興味深いです。アートやクリエイティブって、過去の学びや文脈から来るものだなと改めて思います。
「そろそろこういうものがあっていいんじゃないかな?」というリサーチと、「そろそろこういうものを見てみたいよな」というアート的な目標と、あと時代のコンテクストとして「当時はこれしかできなかったけど、今ならこのくらいできるんじゃないかな?」という当時代性がうまく重なって、やっていいよって言われることって少ないんですよ。
で、「やっていいよ」って言われたら、「やるしかないでしょ」っていう感じになるじゃないですか。
最後の「やるしかないでしょ」でドヤる落合さんの顔が少年みたいですごい好きです(笑)
ここで語られてた中で気になったのが「当時代性」という表現。
簡単に言うと「時代に合っていること」となるのでしょうが、落合さんのように最新のテクノロジーを使ったメディアアートを生み出す人の視点からすると、「少し先の未来を見せられていること」という表現が適している気がします。
元来アートとは「個性の表現」であり、それを時代が評価するかは二の次という印象があります。
作家が死んでから、絶大な評価を受ける音楽・絵画・美術品があるのが好例です。
そんな中、落合さんのように過去・現在・未来からの自分の作品の立ち位置を客観視し、その時代にちょうどいい不可解さ、曖昧さでアートを世に出せるという感覚の鋭さに驚かされます。
作品だけでなく、まさにアーティストとして「当時代性」を持ち、自身を時代にあわせてブランディングできる能力が、もはや表現の世界にまで必要になっているんですね。
著書『魔法の世紀』は、彼が過去からの文脈を経た現代のメディアアートに対する考察や、今後辿り着く目標などについても詳しく書かれていて必読の一冊です。
ビジネスの当時代性について
さて、そんな落合さんの動画を見たときに、ふとちょっと前に通り過ぎたつぶやきを思い出しました。
「タイムバンク」など新しい価値を提示する、株式会社メタップスの佐藤航陽さんのTwitterより。
ここで語られていることも「時代性」。少し角度は異なりますが、ひっくるめて「当時代性」にも当てはまるなと感じます。
テクノロジーによるメディアアートが時代の先を行き過ぎて、少し後ろに戻すことでちょうどいい作品になることに対して、ビジネスにおけるアイディアやコンセプトって何かと斬新性を求めがち。
すでにある仕組みやサービスでは「新規に立ち上げても勝ち目ないのでは…」と思うのも自然だけれども、佐藤さんの言われる「時代背景」によって既存のアイディアでも十分通用する。
それを忘れて挑戦しないなんて、もったいないよねということ。そんなの知らなくてワクワクしてる人が、いずれ市場をかっさらう。
レシピアプリとか、ライブコマースアプリとか、これまでも色々あったけど、今一番を取っているものは、実はかなりの後発組だったりしますしね。
逆に言うと、今すでに広く使われているサービスであっても、「時代背景」にあわせて微調整していかないと、いつのまにか誤差が修正しきれないほど広がって、それは終焉を迎える。
長く続いてたサービスが終わりを告げたり、反対に自分の全然知らない層でやたらと流行っていたりするのは、そういう「当時代性」という要素が多分にあるように感じます。
佐藤さんの著書「お金2.0」、まだKindle版で買ってから途中までしか読んでないけど、序盤から金融についての彼の考えがふんだんに詰まっていて、これからの価値経済に参考になるなと思ってます。またレビュー書こう。
まとめ:本当に大事なのはアイディアではなくて
つらつら書いているだけなので、まとめも何もないのですが。
僕もフリーでやってる手前、自分で事業案なんかを夢想することもあるんですが、どうしてもアイディアのところですでにつまづいたりします。
でも実は、斬新なアイディアなんてのはそんなに重要なことではなく、もっと深い部分が大切なのかなと思ったり。
既存のサービスがすくい切れていない点を考え、それを補えることだったり、別の付加価値を提供することだって立派な新サービスになりえる。
もっと言うと、全く同じようなサービスであっても、自分が「やりたい」と思うことで時代の熱のようなものがフォローしてくれてうまくいく事例があったり(これは最近のSNSでよく感じる)。
そういうもっと根本のところで考えなきゃいけないし、それは実はそんなに深く考えることでもないから思いっきりやればいいし、本当に「やったもん勝ち」っていうのが今の「時代性」なのかなと感じます。
アートとビジネスという、あまり距離の近くない2分野が、同じキーワードでつながる瞬間というのが面白いですね。
最近の感度の高い人は、とても似たビジョンの発言をされることが多いので、これからもそういうのに気づいたらここで紹介できたらと思います。
ではでは。
Dスケ